入野の自然環境を探るU

−2年後の変化の様子−

研究論文

浜松市立入野中学校 科学部


1.動機

 近ごろ地球環境の悪化がさけばれています。フロンによるオゾン層の破戒にオゾンホールの拡大、人間のエネルギー消費の増加による二酸化炭素の増加が原因の地球温暖化、家庭排水などによる水質の悪化、産業廃棄物による河川、地下水、土壌汚染など、環境悪化の問題は切実な問題となっています。そんな中、僕たち科学部では、2年前この入野地区の自然環境を調べ入野地区では汚濁が年々ひどくなっているという結果を得ました。そこで、2年たった今、水質汚染、全国2位という佐鳴湖をかかえるこの入野地区の自然環境は、どのように変化しているか、特にしゅんせつ工事が進む佐鳴湖の水質汚濁は、改善されているのか調査し、これから自分たちはどんなことができるか考え、実行していきたいと考えています。


2.研究の概要

@ 自分たちの足で自然の環境を調べ、前回(2年前)の様子と比べる。
A 河川の自然度を基準を決めて観察し、判定結果を前回と比べる。
B 河川の水質調査をし、前回と比べる。
C 河川工事をしている東神田川の水生生物を調べ、前回と比べる。

3.研究の内容

@自分たちの足で自然環境を調べ、前回2年前の様子と比べる

<目的と方法>

 自分たちの足で入野地区のおおよその様子、自然状況を調べる。そして、その状況を地図にまとめてみて、2年前の入野地区との変化の様子を知る。

<結果>

平成7年度の学区の自然 平成10年度の学区の自然


<考察>  −2年前と比べて自分達の足で調べた環境−

 入野地区の西部の水田や林などは変わらず自然が残っています。また、東部も、変わらず住宅が多くて、自然はほとんど残っていません。そして、北部は2年前、造成工事を行っていた所が今は造成工事も終わって、住宅がたくさんできました。緑は人工的に植えられたものしかありません。佐鳴湖周辺は、2年前は工事を行っていました。佐鳴湖公園の工事がおわり、2年前よりも木がたくさん植えられて緑が増えてきてます。
 また、目につくのは、境川の西側に住宅が増えたことです。この入野地区は2年前と比べて少しずつ自然がけずられ、その分人間によってつくられた緑がふえているようです。


A河川の自然度を基準を決めて観察する

〈目的〉

 地図から、入野地区のおおよその自然の様子はわかった。しかし、実際の細かい様子がわからないので、その地区の環境状況が一番表れやすい、水の周り(湖・川)の様子を調べて2年前と比べてみることにした。
 入野地区の主な川、新川、堀留川、東神田川、境川の四ヶ所で7つの項目に分けて調査した。次のような判定の基準で調査した。

〈方法〉

 次の@からFの項目を調べる。2年前に調査を行った基準に従って、悪い=0点・・・良い=3点とし、川を歩いて観察した。

@川の周りの様子
A流れの様子
B土手の様子
C川原の利用の様子
D川原の植物
E川原の鳥
F川の汚れ



〈結果〉


@ 新川

新川の上流

 新川の上流の様子です。佐鳴湖とつながっています。

新川の中流

 新川の中流の様子です。

新川の下流

 新川の下流の様子です。川の周囲はコンクリートで固められています。

新川の様子のまとめ 平成10年
点数 @周りの様子
(田畑・人家
工場)
A流れの様子
(中州・池・
川原)
B土手の様子
(やぶ・草・
コンクリート)
C川原の利用の様子
(林・草はら・公園
・グランド)
D川原の植物
(植物の種類・数
E川原の島
(島の種類・数)
F水の汚れ
(水生昆虫・魚・
汚れ)
3点 川の周りは林
や畑で人家は
少ない。
広い川原を川
が曲がりくね
っており川原
や中すの中に
池がある。
土手には林や
竹やぶがあり
下草も茂って
いる。
自然の川原が
ほとんどで、
草はらや林に
なっている所
もある
川原特有のカ
ワラヨモギ・
ヤナギなどの
植物が多く、
植物の種類も
豊富である。
四季を通じて
鳥が多い。カ
ワセミやチド
リなどが見ら
れる。巣もつ
くっている。
水はよくすん
でおりりカワ
ゲラ・カゲロ
ウなどの水生
昆虫・アユ・
ヤマメなどの
魚が多い。
2点 田や畑と人家
がまじってい
る。
広い川原を川
が曲がりくね
っている。中す
や川原の池が
少ない。
草がよく茂っ
ている。
自然の川原が
多く、グラン
ド用に整備さ
れている所は
3分の1以下
である。
オギやヨシな
どの草はらは
あるが、カワ
ヨモギ・ヤナギ
は見られない。
コサキ・セッカ・
オオヨシキリ・
ヒバリなどが
見られる。巣
もつくっている。
水はわりあい
きれいで、モノ
アラガイ・ハグロ
トンボやコイ・
フナなどがいる。
1点 人家が土手の
そば近くまで
きている。
せまい川原を
川が曲がりく
ねっている。
中すや川原の
の池が少ない。
草が茂ってい
る所もあるが
ほとんどは石
やコンクリート
で川岸をおお
っている。
自然の川原が
半分以上残っ
ているが、公
園やゴルフ場に
なっている所が
3分の1以上
である。
本来の川原の
植物のなかまは
見られずオオ
ブタクサやセ
イタカアワダチ
ソウなどが多い。
春や夏には見
かける鳥は少
ないが、冬に
はユリカモメや
セキレイ類が
見られる。
水はややにご
っており、魚や
水生昆虫の種
類も数も減る。
シマイシビル
ミズムシなど。
0点 人家や工場が
川のまわりに
密集している。
河原はほとん
どなく、川は
まっすぐ流れ
ている。
コンクリートで
川岸を全部お
おっている。
公園やゴルフ場
になっている
所が3分の2
以上ある。
オオバコなどの
ふみつけられ
てもじょうぶ
な背たけの低い
植物が多い。
ドバト・カラス類
スズメぐらいが
見られるだけ。
水は非常ににご
っており、エラ
ミミズやユリイト
ミミズなど。

太字は、2年前の結果。は悪化、は変化なし、は好転。

グラフ 新川の自然度

新川の様子

 新川の様子は、全体的には変わっていない。川原の様子は変わっておらず、水の汚れも変わっていない。川原の利用や植物の生え方は人間によってコンクリートにされ自然は全くなくなっている。川の周りにたてものが増えてきているので、水の汚れが心配である。



A 掘留川

堀留川の上流

 掘留川の上流の様子です。周囲は工場が建ち並んでいます。しかし、河原にはコンクリートの間から草木が茂っているのが分かります。水面にはオオカナダモが見えます。

堀留川の中流

 掘留川の中流の様子です。上流と同じくコンクリートの間から草が生えてきています。ここでも水面に水草が見られます。

堀留川の下流

 掘留川の下流の様子です。河原はすっかり草木で覆われています。

堀留川の様子のまとめ 平成10年
点数 @周りの様子
(田畑・人家
工場)
A流れの様子
(中州・池・
川原)
B土手の様子
(やぶ・草・
コンクリート)
C川原の利用の様子
(林・草はら・公園
・グランド)
D川原の植物
(植物の種類・数
E川原の島
(島の種類・数)
F水の汚れ
(水生昆虫・魚・
汚れ)
3点 川の周りは林
や畑で人家は
少ない。
広い川原を川
が曲がりくね
っており川原
や中すの中に
池がある。
土手には林や
竹やぶがあり
下草も茂って
いる。
自然の川原が
ほとんどで、
草はらや林に
なっている所
もある
川原特有のカ
ワラヨモギ・
ヤナギなどの
植物が多く、
植物の種類も
豊富である。
四季を通じて
鳥が多い。カ
ワセミやチド
リなどが見ら
れる。巣もつ
くっている。
水はよくすん
でおりりカワ
ゲラ・カゲロ
ウなどの水生
昆虫・アユ・
ヤマメなどの
魚が多い。
2点 田や畑と人家
がまじってい
る。
広い川原を川
が曲がりくね
っている。中す
や川原の池が
少ない。
草がよく茂っ
ている。
自然の川原が
多く、グラン
ド用に整備さ
れている所は
3分の1以下
である。
オギやヨシな
どの草はらは
あるが、カワ
ヨモギ・ヤナギ
は見られない。
コサキ・セッカ・
オオヨシキリ・
ヒバリなどが
見られる。巣
もつくっている。
水はわりあい
きれいで、モノ
アラガイ・ハグロ
トンボやコイ・
フナなどがいる。
1点 人家が土手の
そば近くまで
きている。
せまい川原を
川が曲がりく
ねっている。
中すや川原の
の池が少ない。
草が茂ってい
る所もあるが
ほとんどは石
やコンクリート
で川岸をおお
っている。
自然の川原が
半分以上残っ
ているが、公
園やゴルフ場に
なっている所が
3分の1以上
である。
本来の川原の
植物のなかまは
見られずオオ
ブタクサやセ
イタカアワダチ
ソウなどが多い。
春や夏には見
かける鳥は少
ないが、冬に
はユリカモメや
セキレイ類が
見られる。
水はややにご
っており、魚や
水生昆虫の種
類も数も減る。
シマイシビル
ミズムシなど。
0点 人家や工場が
川のまわりに
密集している。
河原はほとん
どなく、川は
まっすぐ流れ
ている。
コンクリートで
川岸を全部お
おっている。
公園やゴルフ場
になっている
所が3分の2
以上ある。
オオバコなどの
ふみつけられ
てもじょうぶ
な背たけの低い
植物が多い。
ドバト・カラス類
スズメぐらいが
見られるだけ。
水は非常ににご
っており、エラ
ミミズやユリイト
ミミズなど。

太字は、2年前の結果。は悪化、は変化なし、は好転。

グラフ 堀留川の自然度

堀留川の様子

 堀留川の様子は全体的に良くなっている。特に川原の様子が良くなっている。川原には植物が増え、水もきれいになっているようである。ただし、川の周りの建物や川の流れは人間によって人工的なつくりにかえられてしまっている。そのため、水鳥は姿を消している。建物によって自然環境は悪くなっているが、川の周りの植物によってみずはきれいなままである。



B 東神田川

東神田川の中流

 東神田川の中流の様子です。最近、護岸工事が行われるようになり、川の周りの自然が失われてきてきます。

東神田川の下流

 東神田川の下流の様子です。自然の流れを工事によって広げています。上流は佐鳴湖とつながるようになります。

東神田川の下流

 東神田川のさらに下流の様子です。このあたりは工事も終わり、もう少しいくと、新川、堀留川と合流します。

東神田川の様子のまとめ 平成10年
点数 @周りの様子
(田畑・人家
工場)
A流れの様子
(中州・池・
川原)
B土手の様子
(やぶ・草・
コンクリート)
C川原の利用の様子
(林・草はら・公園
・グランド)
D川原の植物
(植物の種類・数
E川原の島
(島の種類・数)
F水の汚れ
(水生昆虫・魚・
汚れ)
3点 川の周りは林
や畑で人家は
少ない。
広い川原を川
が曲がりくね
っており川原
や中すの中に
池がある。
土手には林や
竹やぶがあり
下草も茂って
いる。
自然の川原が
ほとんどで、
草はらや林に
なっている所
もある
川原特有のカ
ワラヨモギ・
ヤナギなどの
植物が多く、
植物の種類も
豊富である。
四季を通じて
鳥が多い。カ
ワセミやチド
リなどが見ら
れる。巣もつ
くっている。
水はよくすん
でおりりカワ
ゲラ・カゲロ
ウなどの水生
昆虫・アユ・
ヤマメなどの
魚が多い。
2点 田や畑と人家
がまじってい
る。
広い川原を川
が曲がりくね
っている。中す
や川原の池が
少ない。
草がよく茂っ
ている。
自然の川原が
多く、グラン
ド用に整備さ
れている所は
3分の1以下
である。
オギやヨシな
どの草はらは
あるが、カワ
ヨモギ・ヤナギ
は見られない。
コサキ・セッカ・
オオヨシキリ・
ヒバリなどが
見られる。巣
もつくっている。
水はわりあい
きれいで、モノ
アラガイ・ハグロ
トンボやコイ・
フナなどがいる。
1点 人家が土手の
そば近くまで
きている。
せまい川原を
川が曲がりく
ねっている。
中すや川原の
の池が少ない。
草が茂ってい
る所もあるが
ほとんどは石
やコンクリート
で川岸をおお
っている。
自然の川原が
半分以上残っ
ているが、公
園やゴルフ場に
なっている所が
3分の1以上
である。
本来の川原の
植物のなかまは
見られずオオ
ブタクサやセ
イタカアワダチ
ソウなどが多い。
春や夏には見
かける鳥は少
ないが、冬に
はユリカモメや
セキレイ類が
見られる。
水はややにご
っており、魚や
水生昆虫の種
類も数も減る。
シマイシビル
ミズムシなど。
0点 人家や工場が
川のまわりに
密集している。
河原はほとん
どなく、川は
まっすぐ流れ
ている。
コンクリートで
川岸を全部お
おっている。
公園やゴルフ場
になっている
所が3分の2
以上ある。
オオバコなどの
ふみつけられ
てもじょうぶ
な背たけの低い
植物が多い。
ドバト・カラス類
スズメぐらいが
見られるだけ。
水は非常ににご
っており、エラ
ミミズやユリイト
ミミズなど。

太字は、2年前の結果。は悪化、は変化なし、は好転。

グラフ 東神田川の自然度

東神田川の様子

 東神田川の様子は、全体的には悪くなっている。特に川原の様子が悪くなっている。川の周りの建物や水の汚れ具合は変わっていない。このことから、工事によって川の周りの様子が自然をなくしてきている。だが、今のところ水への影響はないようである。



C 境川

境川の上流

 境川の上流の様子です。川幅は自然の流れのままです。川の周囲は草が生い茂っています。水中にはオオカナダモが生えています。小さな魚も見られます。

境川の中流

 境川の中流の様子です。川の周囲には、上流と同じく草が生えています。ここでも水中にオオカナダモが見られます。魚の姿もあります。

境川の下流

 境川の下流の様子です。周囲はコンクリートで固められています。水中に水草、魚は見られません。

境川の様子のまとめ 平成10年
点数 @周りの様子
(田畑・人家
工場)
A流れの様子
(中州・池・
川原)
B土手の様子
(やぶ・草・
コンクリート)
C川原の利用の様子
(林・草はら・公園
・グランド)
D川原の植物
(植物の種類・数
E川原の島
(島の種類・数)
F水の汚れ
(水生昆虫・魚・
汚れ)
3点 川の周りは林
や畑で人家は
少ない。
広い川原を川
が曲がりくね
っており川原
や中すの中に
池がある。
土手には林や
竹やぶがあり
下草も茂って
いる。
自然の川原が
ほとんどで、
草はらや林に
なっている所
もある
川原特有のカ
ワラヨモギ・
ヤナギなどの
植物が多く、
植物の種類も
豊富である。
四季を通じて
鳥が多い。カ
ワセミやチド
リなどが見ら
れる。巣もつ
くっている。
水はよくすん
でおりりカワ
ゲラ・カゲロ
ウなどの水生
昆虫・アユ・
ヤマメなどの
魚が多い。
2点 田や畑と人家
がまじってい
る。
広い川原を川
が曲がりくね
っている。中す
や川原の池が
少ない。
草がよく茂っ
ている。
自然の川原が
多く、グラン
ド用に整備さ
れている所は
3分の1以下
である。
オギやヨシな
どの草はらは
あるが、カワ
ヨモギ・ヤナギ
は見られない。
コサキ・セッカ・
オオヨシキリ・
ヒバリなどが
見られる。巣
もつくっている。
水はわりあい
きれいで、モノ
アラガイ・ハグロ
トンボやコイ・
フナなどがいる。
1点 人家が土手の
そば近くまで
きている。
せまい川原を
川が曲がりく
ねっている。
中すや川原の
の池が少ない。
草が茂ってい
る所もあるが
ほとんどは石
やコンクリート
で川岸をおお
っている。
自然の川原が
半分以上残っ
ているが、公
園やゴルフ場に
なっている所が
3分の1以上
である。
本来の川原の
植物のなかまは
見られずオオ
ブタクサやセ
イタカアワダチ
ソウなどが多い。
春や夏には見
かける鳥は少
ないが、冬に
はユリカモメや
セキレイ類が
見られる。
水はややにご
っており、魚や
水生昆虫の種
類も数も減る。
シマイシビル
ミズムシなど。
0点 人家や工場が
川のまわりに
密集している。
河原はほとん
どなく、川は
まっすぐ流れ
ている。
コンクリートで
川岸を全部お
おっている。
公園やゴルフ場
になっている
所が3分の2
以上ある。
オオバコなどの
ふみつけられ
てもじょうぶ
な背たけの低い
植物が多い。
ドバト・カラス類
スズメぐらいが
見られるだけ。
水は非常ににご
っており、エラ
ミミズやユリイト
ミミズなど。

太字は、2年前の結果。は悪化、は変化なし、は好転。

グラフ 境川の自然度

境川の様子

 境川の様子は全体的には悪くなっている。特に土手と川原の様子が悪く、どれも、人間の手で自然を壊されている。ただし、川の周りの建物や、水の汚れは少なく、川の水は自然に近いままである。植物や鳥にとっては、住みにくい環境だが、水の汚れは二年前の様子を保っている。



〈考察〉

グラフ 各河川の自然度

 川の周りに自然が残された東神田川も工事によって川の周囲をコンクリートで固められて自然度も低くなってしまった。
 新川、境川は、川原がなく、水のよごれを浄化する作用もはたからなくなって水質を悪くしているのだと思う。
 ただ1つ、川原に土や草があり、植物が生えている堀留川だけが、自然度がふえていた。川の周りをコンクリートで固められた東神田川と自然度を保った掘留川。これから、この2つの川を調べていくことで本来の川のすがたを探ることができるかもしれない。



B河川の水質の変化を調べる

<目的>

@とAの調査から入野地区の大まかな状況がわかったので、人間の生活の影響がすぐでてくる水の汚れ具合を測定した。

<方法>

平成7年度、8年度の結果と比較を比較して河川の水質を探ってみる。調べる項目は、以下の6つである。6人で担当を決めて、春(5月)と 夏(7月)の2回行った。



<結果>
透視度

 視度は水の濁りの程度を示す尺度で水中の懸濁物質の量と密接な関係がある。数値が高いほど水はきれいである。

グラフ 透視度

 新川は最も悪いのが分かります。それは周りに人家も多く家庭排水がよく流れ込んでいるからです。堀留川が一番よい。堀留川は家庭排水があまり流れてなく、上流の方ではわずかに水がわいていました。境川は下流にいくにつれて悪くなっています。それは上流は田畑などが多いが下流の方は人家が多くなっているからです。



pH

 pHは、水の酸性、アルカリ性を示すもので中性は7です。普通の川ではpHは6.5〜8.5の間に入ることが必要です。数値が高いほど水は汚いのです。

グラフ pH

 pHの結果からは、普通の川が示す6.5〜8.5の範囲におさまっている場所が多い。平均的な川を下回っているのは新川の上流、境川の中流、下流である。新川の上流は佐鳴湖につながっていて下流に行くに従って人家が増えていきます。そのため、下流ににいくにつれて、洗剤や石鹸などの生活排水が流れ込み、水質が酸性からアルカリ性に変わっていくことが分かります。境川は、周りに自然が残っていて、小魚や水草も多いことからも、水質はきれいに保たれていることが分かります。また、水質調査の結果からも、それが証明されました。



溶存酸素

 溶存酸素は水に溶け込んだ酸素で魚などの水中の生物や微生物にとって大変重要なものです。水温が20℃のとき、きれいな水1リットルの中には約9ミリグラムの酸素がふくまれていますが、有機物などの汚れの大きい水では、酸素が有機物の分解に使われるため、一般にその値は小さくなりプランクトンの活動がさかんな湖沼などは、溶存酸素濃度が大きいことがあります。これは、光合成によって溶存酸素が供給されるからです。数値が低いほど水は汚いのです。

グラフ 溶存酸素

 きれいな水の場合、1リットル中に9rの酸素が含まれていることを考えれば、4つの川とも数値は低いことが分かります。特に、堀留川、東神田川が低く、有機物などの汚れが多いことが分かります。東神田川の上流や堀留川には魚がみられますが、東神田川の中流ではみられません。このことから溶存酸素3〜4mg/lの境が魚に必要な酸素の量ということができるのかもしれません。



化学的酸素消費量(COD)

 化学的酸素消費量(COD)は、水中の酸化されやすい物質の酸化によって使われる酸素の量を表します。化学的酸素消費量(COD)の数値は、水中の有機物の目安となり、それが大きいほど、水中に有機物が多くあることを示します。

グラフ COD

 東神田川は上流から中流、下流へといくにつれて有機物による、水の汚れがひどくなっていることが分かります。上流では貝や魚を見ることができますが、中流から下流に向かっては、藻が多くなっていきます。境川は上流、下流の数値が同じだが中流の数値は低くなっています。


りん酸(PO4)

 りん酸(PO4)は、植物の成育に必要な要素で生物から供給されますが、このほかに肥料、工場排水、そして生活排水にも含まれています。りん酸値が高いことは、生物の分解、生活排水の流れ込みなどが多いということです。数値が大きいほど水は汚れていることになります。

グラフ PO4

 境川、新川の数値が高いのが目につきます。これは肥料、生活排水の流れ込みが多く生物の分解もさかんに行われている表れです。境川は周りにたんぼが多く、新川は周りに人家が多いためではないかと考えられます。境川は、下流に行くにつれ、数値が半減しています。これは、他の川と数値が同じになったことを見て分かるように、家が増え、たんぼからの肥料の流れ込みが少なくなったためと考えられます。新川は、中流だけが低くなっています。上流と下流に生活排水の流れ込みが多いため、それに比べると中流が少なくなっているということかもしれません。



亜硝酸(NO2)

 亜硝酸(NO2)は、し尿や、食べ物のかす、お風呂の水などの家庭排水などからでる汚れが分かります。亜硝酸の数値が高いということは、汚染源が近くにあるということです。また、酸素をとる力がたいへん強いので、魚の体にも影響を与えています。数値が大きいほど水は汚れているのです。
<結果>
グラフ NO2

 川の周りに人家が多い、新川、堀留川は、数値が高く、周囲が田んぼに囲まれている東神田川、境川は、低い結果が得られました。これは、ほぼ予想通りでした。ただ亜硝酸は、し尿、食べ物のかす、お風呂の水などの家庭排水から出る汚れであるので、どの川も、上流では、家庭排水が川に流されるということでしょうか。下流に行くにつれ、下水道が整備され、川へ流されなくなったということでしょうか。



<各河川の水質−総合>
新川 堀留川 東神田川 境川
透視度 悪い。周りに
人家が多い。
一番よい。上
流ではわき水
あり。
下流ほど悪い。上
流は田が多く,下
流は家が多い。
pH 下流が悪い。
下流に行くと
家が増える。
中流がよい。 全体的に悪い。
中流はよい。
全体的によい。
 溶存酸素  全体的によい 全体的に悪い 全体的に悪い。
上流が高く,中
が低い。
全体的に悪い。
COD 上,中,下流へ行
くにしたがって悪
い。
中流だけが低い。
PO4 全体的に悪い
中流だけが他
の川と同じ。
全体的によい 全体的によい。 上流,中流は悪い
下流だけが他の川
と同じ程度。
NO2 上流,中流は
悪い。下流は
低い。
全体的に悪い 全体的によい。上
流は,やや悪い。
上流が非常に悪い
中流は,低い。


<考察>
 透視度   pH   溶存酸素   COD   リン酸 
@佐鳴湖      × ×
A佐鳴湖横の池   × ×
B東神田川の上流  ×
C東神田川の中流 
D3つの川の合流  × × ×
◎:連続して減っている ○:減っている −:変わらない ×:悪くなっている

 3年前,2年前と比べると,全体的には,よくなっている項目が多い。佐鳴湖は,透視度,pH,溶存酸素の数値がよくなっていることから,しゅんせつ工事が進み,藻が減って水中の酸素が増えていることが分かります。見た目にも,藻が少なくなった感じはします。しかし,リン酸の数が増えていることをみると,生活排水が多く流れていることがわかります。佐鳴湖横の池にも同じことがいえます。

 次に,今,護岸工事をしている東神田川に興味を持ちました。よくテレビで河原の工事をすると,生物が減り,その結果,水質が悪くなるということを言っています。本当にそうなのか,数値で比べてみました。すると工事をしている中流では、どの項目もよくなっていました。しかし、もう少し下流に行くと、透視度、pH、CODの数値が悪くなっています。工事している部分の水質はよくなっているものの、下流へは、何か悪い影響がでてくるようです。今後、どのようになっていくか、調査を続けていきたいです。

佐鳴湖の様子

 南岸から見る佐鳴湖の様子です。手前は、ヘドロしゅんせつ工事によって埋め立てられた岸です。ここで、アシ、ヨシによる水質浄化の実験を行っています。橋の左側がその場所です。

3つの川の合流点

 新川、堀留川、東神田川の合流点の様子です。護岸工事によりくコンクリートで埋め立てられています。

新川に見られるボラ

 新川で見られたボラの群です。この季節(春から夏)にかけては、佐鳴湖にもはねている姿が見られます。



<全体のまとめ>
 2年前と比べて、自然が最も破壊されたところは、今、工事をやっている東神田川です。2年前は、草がよくしげっていましたが、今は草がしげっておらず、コンクリ−トで固められていました。そして2年前には、植物(オギやヨシ)などの草原があったところが、今は本来の川原の植物の仲間は見られず、コンクリ−トで固められてしまいました。
 2年前と比べて自然が残っているところ、増えているところ、良くなっいるところは堀留川でした。堀留川は2年前と比べてオギやヨシなどの植物が増えていました。そして、水の汚れも2年前と比べて汚れが少なくなり、フナやコイなどがふえてきました。
 こうして調べた川の自然度の様子と川の水質を合わせてみると、2つのことが分かります。
 工事によって自然度が低くなっている東神田川の水質は、下流に行くに連れてpH,溶存酸素,CODの数値が悪くなり、生物にとっては住みにくい環境になっていることがデ−タから分かります。一方、PO4、NO2など、家庭や工場から流れ出る排水の影響は今のところ受けていない事もわかりました。
次に自然度が良くなっている堀留川は、川原に生えている植物や、水中の藻によって生物が生きることができる環境になってきていることも分かりました。(PH,透視度が良くなっている。)
 ヘドロのしゅんせつ工事をしている佐鳴湖の水質調査の結果も、透視度,PH,溶存酸素の値が上がっていて、確実に水質が良くなっていることもわかりました。ただ、佐鳴湖の場合、COD、PO4の値は、2年前より悪くなっていて、生活排水の流れ込みは今でも解決されていないことも、調査結果からわかりました。

入野中生による佐鳴湖クリーン作戦

 今、入野中では毎年8月に佐鳴湖クリ−ン作戦を行っています。これは中学生や地域の人々が協力して行う行事です。環境問題が、新聞やテレビで取り上げられるようになって、2年前と比べると佐鳴湖に捨てられるごみの量は減ってきています。また、水辺の植物が水質浄化に役立つことが知られてきたので、佐鳴湖の周りには植物が多く植えられ、実際に水質も良くなってきています。私たち科学部でも2年前に試験的に植えたツルアシが育ち、水質を良くするのに、少しは役立ったと思います。

 先輩が残してくれた調査結果をもとに、2年前の入野地区の自然環境を調べてみて、境川沿いに家が増えたり、東神田川の川原が工事され、コンクリ−トで固められたりして、人間の手で自然が削られていることが、目につきました。また一方で、住宅地に木が植えられ、公園が作られたり、佐鳴湖公園が整備されたりして人工的に緑を増やそうとしていることもわかりました。

 しかし、佐鳴湖の水質にも見られるように、生活排水の流れ込みは、2年前とかわっていないようです。環境に対する意識が高まっている今、私たちはこの調査結果を生かし、地域の人達に生活排水について呼びかけをしていくことで、水質を改善し、水辺に植物や動物を取り戻していけるかもしれません。見た目の緑を増やすだけでなく、私たち人間を含めた生物にとって生きていきやすい、住み良い環境を、自分達で作っていくことが大切だと思います。
 今後は、さらにこの結果をもとに、工事されてしまった東神田川の水質がどのように変わっていくか、しゅんせつ工事が続いている佐鳴湖は、もとの水質を取り戻せるのか、調査を続けていきたいと思います。



<あとがき>
 今回の研究で熱心にご指導してくださいました、政晴先生、大変ありがとうございました。また、水質検査の道具を貸してくださいました市役所環境企画課のみなさま、ありがとうございました。

 今年の研究で、初めてパソコンを使って表やグラフを作ったり論文をまとめました。パソコンの入力は大変でしたが、グラフの機能は、とても性能がよく、ひと目見て結果を得ることができました。また、せっかくパソコンで論文をまとめたので、この論文を学校のホ−ムペ−ジにのせてもらい、入野中学校の取り組みを全国に紹介してみたいと思います。